防犯セミナー「安全で安心して暮らせるまちづくりの方向性と大防設 に求められるもの。」

この資料は、平成26年5月27日に実施されたNPO法人大阪府防犯設備士協会のセミナーで講演された内容の骨子です。
「安全で安心して暮らせるまちづくりの方向性と大防設に求められるもの」
NPO法人大阪府防犯設備士協会  専務理事  平岡  豁
はじめに
◎ 平成期の犯罪情勢の悪化・・犯罪予防重視の犯罪対策へ、犯罪対策から社会安全   政策へ
◎ 東日本大震災・原発事故の教訓・・平素の備え、地域の絆、安全の重要性を再確認
2つの出来事は、府民の安全に対する意識を変え、犯罪予防を重視した犯罪政策へ切  り替えた!

Ⅰ 安全なまちづくりの方向性を判断する素材

1 犯罪情勢の分析と評価
(1)安全と安心
安全とは・・客観的に犯罪リスクが少ない状態にあることをいう。― 治安指数
安心とは・・犯罪リスクが小さいと思う主観的な心理状況をいう。― 体感治安
(2)治安指数 ・・別表1大阪府下の全刑法犯の認知件数の推移参照
犯罪の量的増加と犯罪の質的変化、複雑化
来日外国人組織犯罪、少年犯罪、財産犯罪の増加、児童虐待、ネグレクト、D・V、
など「家庭 内犯罪」、ストーカー犯罪、動機不可解凶悪事件、振り込め詐欺
など悪質詐欺、サイバー犯罪
(3) 体感治安・・不安感が払拭されないと言われるが何故なのだろうか?
(4) 諸外国と比べたら日本の治安はどうなのか。

2 国や府が示した犯罪対策(政策)
国や府が示した犯罪対策(政策)のなかに、犯罪予防論が反映している。

(1)国の犯罪対策(政策)・・犯罪対策閣僚会議
○「世界一安全な国、日本の復活」をめざして「犯罪に強い社会の実現のための行動
計画2003」、同行動計画2008」は、治安回復の3つの視点として、
①「国民が自らの安全を確保するための活動の支援」・・自主防犯活動(自助)
②「犯罪が生じにくい社会環境の整備」・・犯罪に強い社会環境の構築(共助)
③「水際対策を始めとして各種犯罪対策」・・各行政機関等による予防・取締り対策(公助)
そして、行動計画2008は、
○ 犯罪の減少(安定期の140万件程度)
○ 国民の不安感の払拭
の両方が達成された状態を「良好な治安」として位置づけ、「犯罪が起きない起こさな    い環境」の構築のため、「地域の絆」の再生が必要であるとした。

(2)大阪の犯罪対策(政策)
「大阪府安全なまちづくり条例」の制定(平成14年4月)
安全なまちづくりは府、市町村・事業者・ボランティア、府民一人ひとりの協働により一体となって取り組むべき課題である。

3 犯罪対策(政策)の基本的考え方の変化・・平成期の犯罪情勢の悪化を受け犯罪予防重視へ

(1)犯罪対策(政策)の基本的考え方(理論)の変化
・ 犯罪原因論から犯罪機会論(犯罪予防論)へ
・ 事後対策から事前対策へ、
・ 結果管理から危機管理(リスクマネジメント)へ

(2)犯罪機会(予防)論
・ 社会から犯罪の機会を事前に除去する。(米:防犯環境設計、英:状況的犯罪予防論)
・ 状況的犯罪予防論から社会的犯罪予防論へ
犯罪者を犯行に走らせている個人的・社会的要因を事前に排除する。・・社会安全政策

Ⅱ 安全・安心なまちづくりの方向性と大防設に求められるもの

1 安全なまちづくりの方向性(事後対策から事前対策へ)
犯罪予防が前面に打ち出され、警察主導の犯罪対策から、地域住民との協働による犯罪政策へ切り替える。・・都市部ではもっと早くから問題になっていた。
○ 警察主導から地域住民との協働へ(コミュニティポリシングという考え方)
・ 犯罪予防が中心となる犯罪対策では、地域住民が主役であり、「国民が自らの安全を確保するための活動」が原則となる。
・ 基礎自治体の役割の増大・・財政基盤、条例制定権、住民組織力
○ 地域社会のニーズに答える必要
・ 犯罪対策(政策)の対象の拡大・・犯罪(兆候もふくむ。)及び秩序違反行為・・
・ 不安感の払拭・・個々の対策とまち全体の対策の相互の補完
○ 多機関連携による具体的問題に指向した犯罪対策(政策)の推進・リスクマネジメントの手法
・ 1つ1つの問題の解決を地域住民、事業者や多くの行政機関などが連携して対応していく。
・ 本来、犯罪対策でないものも含まれる。・・社会安全政策
○ 安全産業(警備業、防犯設備機器など)や各種防犯ボランティアなどの役割の増大
・ きめの細かい行政サービスが求められる。

2 安全なまちづくりのおける大防設の役割
大防設の設立趣旨に照らして、「専門性を生かした安全で安心して暮らせるまちづくりの支援」
・ 基本的スタンスは、府民、事業者などの地域社会の治安に対する社会的責任としての活動
① 自主防犯活動の支援(自助)
・ 犯罪の標的となる人、建物、物の防護の充実・強化
・ 錠前、防犯ガラス、防犯カメラ、機械警備の設置、各種防犯センサーなど防犯設備機器を駆使して、防護の充実強化を図る。

② 犯罪に強い社会環境の構築(共助)
ソフト面の地域力の復活には限界があり、最新の防犯設備機器システムを駆使して、これを補てんしながら、犯罪に強い環境の整備を図る。

③ 各行政機関等による予防・取締り対策(公助)
学童通学路の保護など具体的問題を指向した対策のなかに、防犯カメラ等防犯設備機器を有効に活用した施策を盛り込んでいる。・・顔画面自動識別装置、街頭防犯カメラ等による巡回など

3 安全なまちづくりの求められる活動の課題と問題点
我々の平素の活動のなかで、次のような課題と問題点が指摘できる。(私見)
① 街頭防犯カメラの設置とプライバシー保護
② 防犯設備機器・システムによる警備の限界
③ 機械警備の有効性と課題
④ 高齢化社会における犯罪脆弱者保護のための防犯設備機器・システムのあり方
⑤ 防犯設備士・総合防犯設備士の法定資格化(犯罪対策のなかでの位置づけ)

(1)街頭防犯カメラの設置とプライバシーの保護
安全と自由との間にバランスが求められ、その線引きは国民の合意の形成によるとされている。
最近の治安情勢の悪化は、街頭防犯カメラの設置に市民の約98%近い賛成があるとされるが、そのうちの41%は不安だけれどもやむを得ないという回答であり、いつ逆風に代わるかわからない危険性を帯びている。カメラ設置の目的を明確にし、設置基準を順守するともに、設置管理者を明らかにし、説明責任を果すことが必要となる。
※ 大阪府優良防犯カメラシステムの性能及び設置基準(大防設ホームページ)参照

(2)防犯設備機器・システムによる警備の限界
防犯設備機器・システムの進化が著しく、大抵のことは、機器で賄えるようになってきたが、最終的な措置は現在でも人の手に委ねられている。このことを念頭に置いて、システム設計を行わないと現場措置が有効に実施できない恐れが出てくる。
・ 通学路の置ける街頭監視カメラの設置
・ ローカルシステムにおける緊急時の対応
・ 高齢者救護システム
など警備員の配置等人と機械の連携に特段の配慮を必要とする。

(3)機械警備の有効性と課題
警備業法に定める機械警備業は、今やセキュリティ対策として重要な役割を果たしているが、現場措置は警備員が警備車両で現場に駆け付けて行うことを原則としており、関係機関への通報も確認通報を原則としている。警備車両には現在のところ緊急車両の指定はなく、現場措置が遅れる場合がある。そのため、ほとんどの都道府県では、犯罪の蓋然性が高い場合は、関係機関に即時通報して良いこことなっており、110番、119番との連動が機械警備の有効性を高めている。
対象施設に於ける警備情報がいかに正確に送信、受信されるか、誤報対策が即時通報の重要性と相まって重要な課題とされる。

(4)高齢化社会における犯罪脆弱者のための防犯設備機器・システムのあり方
少子高齢化社会において、孤立している高齢者を犯罪から守るための体制つくりは極めて重要な課題である。高齢者被害の悪質商法対策についても、消費者安全法の改正という形で協働の組織づくりが検討されてなど、新たな手法として、「多くの関係機関が協働して具体的問題解決にあたることの必要性」が提言されている。同様に犯罪脆弱者といわれる子供、女性に対する特別な対策の必要性が主張されている。大阪府安全なまちづくり条例のもと設立された府をはじめ各市町村の安全なまちづくり協議会に、大防設からも専門的立場で委員の派遣を行っているが、具体的な活用がなされていないのが実情である。

(5)防犯設備士・総合防犯設備士の法定資格化
「今や犯罪対策は国民・社会にとって最も重要な施策の1つであるといえるが、その基本理念(基本法)を国民の代表である国会が全く関与せずに決定してよいのか。」という「犯罪対策の基本法も制定に向けた提言」がある。すでに、犯罪対策閣僚会議が示した「行動計画2003」などのなかで、防犯設備士の積極的な活用に触れているが、基本法で防犯設備士等が法定資格化され、犯罪対策のなかでの明確な役割が示されることを願う、そのための実績づくりが必要ではないか。
※ 「これからの安全・安心研究会提言とその意義」藤原静雄:警察政策第16巻P14)
結び犯罪情勢は変化する。平成期の犯罪情勢の悪化の最大の要因は、来日外国人グループによる組織的犯罪の増加である。少子高齢化社会 は外国人労働者の移民を必要としており、外国人と共生する社会を模索していく必要に迫られている。また、家庭内犯罪やサーバー犯罪など新しいタイプの犯罪に対する対応が求められている。その意味で、犯罪予防論を中心とした安全で安心して暮らせるまちづくりの推進は重要な課題であるが、総花的な対策ではなく具体的問題を指向し、地域住民をはじめ、多くの関係機関などの協働により施策を進めていくことが必要とされている。そのなかで、大阪府防犯設備士協会、防犯設備士等がどのような役割を果たすべきか模索し、積極的に 参画することが必要であると思う。